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1型糖尿病患者の大村詠一が日々の療養生活や研究情報などを患者の視点でつづっていきます

横浜市立大学の研究グループが「血管網を有する膵島」の作製ならびにマウスへの移植後の生存率向上を発表!

今夜は、横浜市立大学の研究グループが発表された研究を紹介します。

まずは、研究を発表された横浜市立大学のニュース記事はこちら↓

 

www.yokohama-cu.ac.jp

 

横浜市立大学 学術院医学群 臓器再生医学 谷口英樹主任教授、武部貴則教授(同大先端医科学研究センター教授・東京医科歯科大学 統合研究機構教授・シンシナティ小児病院准教授)、髙橋禎暢(研究当時大学院生)らの研究グループは、さまざまな臓器等より分離した微小な組織片を血管内皮細胞及び間葉系細胞と3次元的に共培養することで、血管網を有した立体組織を自律的に創出することに成功しました。さらに、アルバータ大学(カナダ) 金 達也教授との共同研究により、本手法をマウス・ヒト膵島*1に応用した結果、血管網を有した膵島組織を創出できること、得られた血管化膵島(新法)の移植により重症糖尿病モデルマウスの生存を大幅に改善することなどを見出しました。血管化膵島移植*2は早期の血液灌流*3を通じた膵島の構造化・機能化を促していると考えられ、治療効果に優れた新たな移植手法の確立に繋がるものと期待されます。

 

用語説明

*1 膵島:膵臓内に分布する島様の構造体で、数十個から数百個の細胞からなる、直径50~200μmの多角体。血糖値を調整するインシュリンなどのホルモンを分泌する。

*2 膵島移植:何らかの原因で膵島が壊れ、インシュリンを分泌できなくなると糖尿病となり、高血糖や重症低血糖に苦しんだり、合併症の進行を防ぐことが難しくなる。そのような糖尿病患者に、臓器提供者(ドナー)より提供された膵臓から膵島細胞のみを分離して移植する治療法。膵臓移植と異なり、外科手術が不要で、患者さんの負担が軽いことが特徴。

*3血液灌流:血管を通して臓器や細胞に血液を流すこと。

 

 

ざっくりまとめようと意気込みましたが、問い合わせ対応等で1日が終わってしまいそうだったので、事務局にまとめてもらって最終確認だけさせてもらった記事がこちら↓

 

press-iddm.net

 

 

膵島移植のメリットは、臓器移植の膵臓移植と違って点滴で済むところ!

 

そして、うまく生着すれば、血糖値に応じてインスリンを出す膵β細胞のおかげでインスリンが分泌されるのはもちろん、血糖値を上昇させるグルカゴンを分泌する膵α細胞も膵島には含まれるので、重篤低血糖が起こりにくくなることが最大の魅力です!

 

しかし、うまく生着しないとインスリン離脱するには複数回の移植手術が必要になったり、生着した膵島細胞が複数年で機能しなくなるのが課題と言われています。

 

その中で、研究者の方々はより生着率が高く、生存率が高い膵島移植の方法を考えられています。

 

膵臓から膵島に単離する方法だったり、膵島を移植する部位の検討だったりと工夫がめぐらされる中で、今回の研究グループが行っているのは、移植する膵島をそのまま移植するのではなく、血管を張り巡らせて移植する方法です。

 

実際に血管網を有する膵島(血管化膵島と言うそうです)の作製にも成功し、移植後の結果も良好ということで非常に画期的な研究なんじゃないかなと、研究好きな一患者は興奮したのでした。

 

ミクロカプセルやマクロカプセルなどの自己免疫からの攻撃を守るカプセルなどで包むときは血管が邪魔にならないのかな?この血管化膵島を自己免疫から守り、移植後にまた1型糖尿病を発症するのを防ぐためにも、1型糖尿病の発症メカニズムの解析だったり予防の研究も並行して進む必要があるよなと興味はつきませんね。

 

このような素晴らしい研究の謝辞に2010年に研究助成した日本IDDMネットワークの名前が掲載されていることに笑みをこぼしつつ、日夜研究されて今回の成果を発表された先生や大学院生に敬意を表するとともに、この研究を支援された支援者のみなさまに感謝を申し上げます。

 

最後に、本研究が掲載された Cell Reports へのリンクを紹介します。

英語が得意な方は、こちらもどうぞ↓

 

Self-Condensation Culture Enables Vascularization of Tissue Fragments for Efficient Therapeutic Transplantation: Cell Reports

 

他の記事もそうですが、このブログで紹介されている内容は、全くの素人意見ですので専門的な立場の方から監修を受けているわけではありません。

正式な研究内容などは、原文を紹介しておりますので、そちらをご覧ください。